【溺愛症候群】
そのまま宴会場を縦断しようと歩を進めたら、Tシャツに違和感を感じて振り向いた。
「榊、くん」
裾の端っこ、かなり下の方を遠慮がちに摘んでいたのは香田さんだった。
「ん? どしたの?」
少し俯き気味にしているので、俺は屈んで目の高さをあわせた。
「部屋、一緒に行ってもいいですか?」
……なんか、小動物みたいだな、この人。
いや、可愛いって意味なんだけど。
妹みたいにがっつり来られると疲れるから、おとなしくて助かる。