【溺愛症候群】
「……右足が、痺れました……」
先程まで彼女がしていた隙のない正座姿を思い出して、深く納得した。
食事の間ずっと正座してたなら、やりなれていたとしても痺れるだろう。
「歩ける?」
「…歩けなくても、歩きます」
……どれだけ強情なんだ。
その他人に頼らない強さが、馴れ合いをよしとしない態度が、少し癇に障ったのかもしれない。
ひどく、彼女をからかいたい衝動に駆られた。
「また抱っこしたげようか?」
ムカつくくらいの笑顔で腕を広げて言ってやった。
彼女は一瞬面食らって、その後頬を淡く染めて、
「結構ですっ」
と、強く断った。
俺は少し面白くなって、笑いを堪えながら先を歩く彼女の後を追った。