【溺愛症候群】
「なんか楽しそうだね」
「だなー。俺らの出し物ショボいって苦情来たらどうする?」
「そりゃ智が責任とるんだろ?」
「班長、ファイトです」
ぐっ、と差し出された香田さんの握りこぶし。
「結局俺かー」
「嫌だったらジャンケン強くなれ」
諦めの入った、でも嫌そうな声を出す智の肩を慰めるように軽く叩く。
「班長たち早ー。ここ座るんだよな?」
他の班員が丁度やってきて、席を勧めた。
周りを見れば薄暗い会場は大概埋まっていて、一段高い舞台は煌煌とライトが点いている。
いよいよ始まる、といったところだろうか。
後ろに置いた饅頭とマシュマロを思い出し、誰にも気付かれないように一人こっそり深く息を吐いた。