【溺愛症候群】
「そこの当たり食べた人」
「むん?」
いつの間にか司会をしていた先輩が隣に来ていた。
「すごくナチュラルに当たり食べてましたね」
急に話し掛けられ、口に含んだままの水を急いで飲み込んだ。
「はぁ……それが仕事なんで」
女子たちに顔を向けたまま、隣に立つ先輩を横目で盗み見る。
女性にしては背が高めなのだろう、丸い頭の形が触らなくてもわかるようなショートヘアーのカラメル色が、随分近い位置にある。
大きな灰色の瞳は青汁を飲んでいるのが誰かを熱心に探している。
少し日本人離れした顔立ちに首筋を顕にする短い髪が似合っているが、不思議と男っぽくも女っぽくもない。
言うなれば、少年のような少女のような、中性的な雰囲気を身に纏っていた。