【溺愛症候群】



 渡すたびに視線が交わって、そのたびに俺は落ち着かなくなる。


 こそばゆいような、変な感覚。


 渡すたびに、無意識に昨日との違いを探していた。


 今日は服が若葉色だな、とか。

 ネックレス、真ん丸でやけに大きいな、とか。

 今日はおだんごじゃないんだな、とか。

 ブレスレットみたいな華奢な時計だな、とか。


 そういう、すごくどうでもよくて、でも彼女を構成する部分部分を見ていた。




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