【溺愛症候群】
「俺の隣、誰?」
「瀬戸さんは前から3番目ね。ハユの隣はー……」
手元の座席表をちらり、と見る。
「香田さんだな」
「ふぅん、ありがと」
思い出すのは、強い眼差しと肌を際立たせる漆黒の髪。
何喋ればいいんだろう。
……まぁ、なんとかなるかな。
生徒が続々と現われ、次々とそれぞれのバスに吸い込まれていく。
閉鎖された騒めきの中、目を閉じる。
親しくない人と密着する乗り物は、どうも苦手だ。