【溺愛症候群】
「ハユくん、おはよ」
声に目蓋を上げたら、チィがいた。
「おはよ」
元気よさそうな満面の笑みにつられて、自然と頬がゆるんだ。
「席近いね」
チィが顔を出したのは、俺の前の窓際の席からで。
智と隣なのかと、心の隅で少しがっかりする俺がいた。
多少でも知ってる女子なら、どうにか喋り通せる気がしたんだけど。
「そうだね。香田さんと喋ったことある?」
「うん。コウちゃん、すっごくいい子だよ。席、隣なの?」
よくわからないが、ごり押しされた。
最初のキツそうな印象からか、どうもいい子なのかどうかわからない。
チィがいい子と言うならば、きっといい子なのだと思う。
何がどういい子なのかは全くわからないが。