【溺愛症候群】



「え、そうなの。つまらんなぁ」

 ちゃんと言葉どおり受け取ってくれた智は飽きたような顔をして、背もたれに体重を預けた。


 落ち着かなくて、顔に手をのばす。

 眼鏡がないと心許ないというか、顔がすうすうするというか。

 守ってくれるものを失った気分だ。


「あ、教務課だ」


 誰ともなしに聞こえた声に前を見れば、すり鉢の底の壇上に、ぱりっとしたスーツを着た男があがる。

 あれが教務課というところの人なのだろう。




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