【溺愛症候群】
彼女は相変わらずぐったりしたまま。
「ハユ」
首を回し、声の主を見上げる。
「あと25分くらいだって。予定より早く着きそうだから」
「そっか……ありがと」
予定よりだいぶ早くて助かるが、彼女が休憩まで保つかが問題だ。
呼吸は浅く、顔色はさらに青白く、冷や汗をかいている。
妹の時のように、頑張れと手を握ってあげるわけにもいかない。
俺はひたすら、早く休憩になることを祈り、彼女の様子をこまめに見てあげることしか出来なかった。
人が隣で苦しんでいるのに助けてあげられないという事実が、とても歯痒くて苦しかった。