【溺愛症候群】



 バスが広々としたパーキングエリアに入るか入らないかというとき。


「っ」


 彼女を、一際大きな波が襲った。

 本能が、赤いランプを激しく点灯させる。


「智っ」


 口が勝手に動いていた。


「なるべくトイレに近いところで降ろしてくれるように頼んで!」

「わかった」


 智が走る音や周囲の不安そうな声を耳に、彼女に歩けそうか尋ねる。


 返ってきた答えは、否。


 一刻も早く外に連れ出さなければ。




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