【溺愛症候群】



 女子トイレに駆け込み、彼女を洗面台の前に下ろして立たせる。

 彼女は前のめりになり、縁に手をついて苦しそうに咳き込む。


「吐いた方が楽になるよ」


 咳をする小さな背をさすりながら言う。

 俺の言葉に促されるように、彼女は少し吐いた。

 さらさらの髪が邪魔にならないように、集めて持ち上げておく。


「ハユくんっ」


 遅れて着いたチィが、息を弾ませている。

 俺はポケットの財布から取り出した小銭を渡し、チィに水とコップを調達するよう頼む。

 チィはすぐに走って外に行った。




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