小倉ひとつ。
IHヒーター対応のたい焼き器は、持ち手が細身で私にも持ちやすそうに見える。


「あの、触ってもいいですか?」

「ええ、もちろんです。どうぞ」


一時期本格的に買おうと思っていたときに家電量販店で探したから、一応箱に入っている状態で見たことがある。


でも、実際に持ってみるとやっぱり違う。


一度にふたつ焼けるなら、ひとつずつ分ければいいよね。

フッ素加工してあるので焦げつかないらしい。なるほど。


ひっくり返せないほど重くはない。持ち上げてみると、中身が入っても、私でも大丈夫そうな軽さ。

よかった。たい焼きはひっくり返すのが楽しいもんね。


うわあうわあ、これがたい焼き器かあ……!


目を輝かせて鉄板を開けたり閉じたり説明書を見たり、いろいろいじってみる私を、瀧川さんはにこにこしばらく待ってくれた。


「どうしましょうか。すぐに作りますか? それとも、その前に一度、何かお茶でもお出ししましょうか」

「いえ、先ほどカフェでごちそうになりましたから、お茶は大丈夫です。……あの」


お茶といえば、なんですが。
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