小倉ひとつ。
「瀧川さん、半分こと丸々ひとつとどちらがよろしいですか」


綺麗に切ったとはいえ、切ったたい焼きはお好きではないかもしれないので、一応聞いてみる。


「半分こでお願いします」

「はい」


丸々ひとつと言われたら、切ったたい焼きは私がいただくつもりだったけれど、瀧川さん優しい。


持ってきた懐紙に半分ずつのせる。


冬にぴったりの雪だるまが淡く描かれた、お気に入りの懐紙。


稲やさんでも懐紙にのせてお出しするので、せっかくだからお皿より懐紙にのせて食べたくて、これも鞄に詰めてあった。


ごそごそ取り出した私の手元を見て、瀧川さんが微笑んだ。


「懐紙可愛いですね。どちらのものですか?」

「ありがとうございます。お気に入りなんです」


雪だるまの素朴な感じに一目惚れして買ったので、褒めてもらえると嬉しい。ゆるりと口元が緩む。


全体的に極薄い水色がかったデザインで、たい焼きの色が映えるかなと思ってこれにしておいた。


うん、やっぱりパリッとした焼き色が鮮やかに見える。


「懐紙は行きつけのお茶屋さんのものです」


……そっと、小さく息を吸う。


がんばれ、わたし。


「お抹茶をいただけるお座敷がありますから、今度ご案内しましょうか」
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