小倉ひとつ。
「それでは、よいお年をお迎えください」
「ありがとうございます。立花さんも、よいお年をお迎えください」
そっとお座敷の引き戸を閉める。
本当は稲中さんは、もう今年最後だから、瀧川くんに合わせた時間にお昼休みを取れるようにしようかっておっしゃってくださった。
でもきっと私が耐えられないから、ありがとうございます、大丈夫ですって言って、カウンターにいる方を選んだ。
「かおりちゃーん」
「はい!」
年末はいつも苦しい。
今年も言えなかったな、諦めた方がいいんだろうなって何度も思う。
きっと、この恋を手放すまでの期限はどんどん短くなっている。
先に延ばせば延ばすほど、瀧川さんは出会いが増えて、もしかしたら転勤するかもしれなくて。
あんこが苦手になりはしないと思うけれど、何か事情ができて稲やさんに来られなくなる可能性はある。
いつ会えなくなるかしれない。それでも諦められない。
今年はいい年だった。
瀧川さんとたくさんお話をして、お出かけもして、名前を呼べるようになった。嬉しいことはたくさんあった。
……ああ、好きだ。瀧川さんが好きだ。
祈るみたいに息をする。
ゆっくり吐いて、吸って、吐く。満ちる感慨に、祈るみたいに息をする。
「ありがとうございます。立花さんも、よいお年をお迎えください」
そっとお座敷の引き戸を閉める。
本当は稲中さんは、もう今年最後だから、瀧川くんに合わせた時間にお昼休みを取れるようにしようかっておっしゃってくださった。
でもきっと私が耐えられないから、ありがとうございます、大丈夫ですって言って、カウンターにいる方を選んだ。
「かおりちゃーん」
「はい!」
年末はいつも苦しい。
今年も言えなかったな、諦めた方がいいんだろうなって何度も思う。
きっと、この恋を手放すまでの期限はどんどん短くなっている。
先に延ばせば延ばすほど、瀧川さんは出会いが増えて、もしかしたら転勤するかもしれなくて。
あんこが苦手になりはしないと思うけれど、何か事情ができて稲やさんに来られなくなる可能性はある。
いつ会えなくなるかしれない。それでも諦められない。
今年はいい年だった。
瀧川さんとたくさんお話をして、お出かけもして、名前を呼べるようになった。嬉しいことはたくさんあった。
……ああ、好きだ。瀧川さんが好きだ。
祈るみたいに息をする。
ゆっくり吐いて、吸って、吐く。満ちる感慨に、祈るみたいに息をする。