小倉ひとつ。
「来週末はあいてらっしゃいますか?」

「はい」

「次は何にしましょうか。たい焼きばかりでもなんですから、別のものの方がよろしいですか」


新しいお誘いを、迫り上がる感慨とともに受けとめる。


正直に言うと、どちらでもよかった。


たい焼きばかりでもいいはずの瀧川さんが、気を使ってくださったのは分かる。


瀧川さんと一緒に作れるなら、たい焼きでも楽しいし、他のものでも楽しいし、からすぎるものでなければなんでも美味しく楽しめると思う。


でも、たい焼き以外にせよたい焼きにせよ、私はあまり瀧川さんの好みを把握できていないので、まずはそこを確認するべきだろう。


「瀧川さんは、アレルギーとか苦手なものとか、お好きなものでもいいんですが、何かありますか?」

「お気遣いありがとうございます。なんでも大丈夫です。食物アレルギーはありません。苦手なものも特には。好きなものは魚介類ですね。立花さんはからいものはあまり得意ではないのですよね?」

「はい」


瀧川さんはこういうところが細やかだ。


私にただ聞き返すのではなくて、もしかしたら自分からはちょっと言いにくいかなということをさらっと混ぜて聞いてくれる。


苦手と直接的に言わないでくれるのも、頷きやすくて嬉しい。


「私も基本的にはなんでも大丈夫なんですが、からすぎるものはあんまり得意ではなくて」


好きなものは洋食です、と言ったら、あまりにもざっくりした好みに、瀧川さんがおかしそうに破顔した。


できるだけ好みを絞らないようにしたのは分かりやすかったらしい。
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