小倉ひとつ。
それからお互いに誘ったり誘われたりして、お休みの日以外にもお昼を何回かご一緒するようになり。

もうこちらからお願いしなくても、瀧川さんが来店された時点で、一旦休憩に入るように促されることが増えていた。

瀧川さんも頻繁に「ご都合がよろしければ」ってお昼に誘ってくださる。


その回数が片手の指では数えきれなくなったとき、意を決して瀧川さんを見据え。


「瀧川さん」

「はい」


あの。


「稲中さんにお願いすれば、お昼の休憩時間を変えていただけると思うんです」


わがままを。

わがままを、言わせてほしい。


「瀧川さんがもしお嫌でなければ、ご都合がよろしいときだけ、私が大学生な間だけで構いませんので……十三時からに、して、ご一緒させていただけないでしょうか」


期限を切ったのは、そうしないと、いつまでもずるずる引き伸ばしそうだから。


残り一ヶ月くらいだけでいいから、特別な思い出が欲しかった。


「……もし、お嫌でなければ」


おずおずと繰り返した私に、瀧川さんはにっこり笑って即答した。


「もちろんです。もし稲中さんがご了承くださるのでしたら、是非」
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