小倉ひとつ。
あとは、もちろんお仕事を頑張る。


少し早く来ていつもより丁寧にお掃除を終わらせたり、洗い物を率先してやったり、仕込みをお邪魔にならない範囲でお手伝いしたり。

普段からできることだけれど、念入りに。


そうやって思いつく限り、お願いされる限りのお仕事をこなしていくと、私のできることがあまりに少ないって気づかずにはいられない。


経験を積んだらもう少しできることが増えると思うのだけれど、後を継ぐと決めてらっしゃる息子さんご夫婦が積むのが当然最優先だから、私に教えていただくお手間を取らせて邪魔はできない。

あまりあれもこれもって欲張るのが最善とは思えなかった。


……周りの友達はみんな、進学か就職か選択して、就職活動を経て内定を得ている。

私みたいにアルバイトから引き続きって人は少ない。


だから、自分をアピールして勝ち抜いたわけじゃない私ができることの少なさに、ときどき不安になる。


……奥さんが生けてらしたお花を書き留めてみようか。

お花を生けるときにご一緒する機会を少しずつ増やしていただいている。組み合わせとか名前とかを覚えるのは必須だろう。


何か資格を取ったら、少しは役に立てることが広がるだろうか。

食品衛生責任者とか防火管理者とか。相談してみよう。


語学力もあった方がいいかも。立地が都市部なことも相まって、ときたま話しづらそうなお電話をいただく。

着付けを自分でもっと手早くできるようにするとか、茶道や華道をもっと本腰を入れて習うとか、そういう稲やさんのお仕事に活かせそうなことも。


あとは。あとは。


まずはやっぱり、目の前のことを一生懸命、丁寧に。
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