小倉ひとつ。
「ええと、ゆっくりついでにつかぬことをお聞きしますけれども。かおりさん」

「はい」

「フォーマルっていうか、こういう格好の方がお好きですか」


思わず固まってしまった。


そうだよね、稲やさんではなんとか正面でも対応できてるんだから、舞い上がる原因は絞られるよね……!


言わずもがな、約束と、場所と、服装である。


ちらちらジャケットを見ていたら、当前バレるに決まっている。


「……よくお似合いだなあと思いマス。ええと、その、大変お似合いデス」


好きかどうかには言及しなかったけれど、どう見てもバレバレ。


フォーマルというよりは上品な感じに弱いのだ。

なんというかこう、大人力が上がる感じがする。


大人力ってなんだそれ、という感じだけれど、言葉遣いとか仕草とかから大人っぽさがにじむというか。伝われ大人力。


そして私は大人にどうしようもなく憧れがあるので、大人力が高い人に弱いのだと思う。


いや、今はもう、結構前から、どちらかと言うと憧れというよりは、たきが……要さんが好みど真ん中なだけなんだけれど。


「ええと、ありがとうございます……?」


思わず片言になると、要さんまで若干片言になった。


「俺もう毎日ジャケット着ようかな……ああでも、よく考えたらスーツなんだから夏場以外いつもジャケット着て、る……ん?」


あっまずい。これは大変まずい流れだ。
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