小倉ひとつ。
「基本はお掃除とかお茶出しとかカウンターとか、今まで通りお願いしたいのだけれど、今度から月に一度、一緒にお店でお花を選んでほしいの。いつもお願いしているお花屋さんがあるのだけれど、まずはそちらへの付き添いからで大丈夫よ」

「はい」


奥さんが仕入れてきたお花を選んだり生けるお手伝いをしたりしたことはあるけれど、お店に同行するのは初。


「まずはうちにある花器と常連さんの誕生花を覚えるところから始めてもらおうと思っていて、一応目標として一ヶ月か二ヶ月でお願いしたいのだけれど、もう少し余裕があった方がいいかしら」

「いえ、大丈夫です」


花器はおおよそ覚えている。常連さんのお誕生花もそんなに多くない。

多分一ヶ月もあればなんとかなる。


「じゃあ、これ、花器と誕生花の一覧表。これはかおりちゃんのものだから、書き込みしても大丈夫よ。自由に使ってね」

「え、ありがとうございます、お手数おかけしてすみません……!」


まさかそれぞれの写真と一言つきの小冊子を渡されるとは思わなかった。

てっきり今からメモを取るのかと。制服のポケットに忍ばせておけるサイズなのがありがたい。


メモを取るのは大変だからと息子さんのお嫁さんが作ってくださったらしい。


なんて細やかな心配りなんだ、絶対後でお礼を言おう。本当にありがとうございます。
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