小倉ひとつ。
17.贈り物に約束を
最近、同棲を始めた。
「毎日会っておはようとおやすみが言えたら最高だと思うんだ」と言われてすぐさま頷いた。
私の今まで貯めてきた一人暮らし用の貯蓄が唸る。嘘。少し唸るくらい。
要さんが、俺の方が年上でもう何年も社会人やってるのに、新社会人のかおりと半額ずつ折半なんてできない、と言って多めに出してくれている。ありがたい。
しとどに雨が降る日のお家デートの度に、内心こっそり要さんと一緒に暮らしたらこんな感じなのかなあって思っていたんだけれど、そんな想像よりずっとずっと素敵だった。
柔らな雨音がすっかり耳に馴染んでしまうような梅雨の間は、どうしてもお出かけしにくい。
だからそのぶんお家にいることが増えているのだけれど、一緒にお家にいるだけで幸せだった。
全てが穏やかで、日常にさえ憧れるような。
おはようもおやすみも、行ってきますも行ってらっしゃいも、お疲れさまも、ただ名前を呼ぶのでさえ、どこか甘やかでくすぐったくて、幸せに満ちている。
好きなひとがいてくれるいい匂いの朝は、それだけでいくつも設定したけたたましい目覚ましに匹敵するほど。
梅雨に同棲を始めたのは正解だったかもしれない。
半分こしたプリン。倒れそうに美味しいパウンドケーキ。口寂しいときにと私が好きなものばかりを揃えてくれたドライフルーツ。
要さんとの二人暮らしは、毎日ちょっとしたおやつとともにあった。
だから、なんでもない日でさえ毎日特別な日に変わり、分け合ったおやつとともに思い出が増えていく。
「ねえ要さん、私最高のこと思いついちゃったんだけれど」
「ん? なに?」
朝、ご飯を作ろうとふたりでキッチンに向かう途中、要さんを見上げる。
「たい焼き器でオムレツを焼こう」
最高だ、と言われた。最高でしょう、と神妙に頷いておいた。
「毎日会っておはようとおやすみが言えたら最高だと思うんだ」と言われてすぐさま頷いた。
私の今まで貯めてきた一人暮らし用の貯蓄が唸る。嘘。少し唸るくらい。
要さんが、俺の方が年上でもう何年も社会人やってるのに、新社会人のかおりと半額ずつ折半なんてできない、と言って多めに出してくれている。ありがたい。
しとどに雨が降る日のお家デートの度に、内心こっそり要さんと一緒に暮らしたらこんな感じなのかなあって思っていたんだけれど、そんな想像よりずっとずっと素敵だった。
柔らな雨音がすっかり耳に馴染んでしまうような梅雨の間は、どうしてもお出かけしにくい。
だからそのぶんお家にいることが増えているのだけれど、一緒にお家にいるだけで幸せだった。
全てが穏やかで、日常にさえ憧れるような。
おはようもおやすみも、行ってきますも行ってらっしゃいも、お疲れさまも、ただ名前を呼ぶのでさえ、どこか甘やかでくすぐったくて、幸せに満ちている。
好きなひとがいてくれるいい匂いの朝は、それだけでいくつも設定したけたたましい目覚ましに匹敵するほど。
梅雨に同棲を始めたのは正解だったかもしれない。
半分こしたプリン。倒れそうに美味しいパウンドケーキ。口寂しいときにと私が好きなものばかりを揃えてくれたドライフルーツ。
要さんとの二人暮らしは、毎日ちょっとしたおやつとともにあった。
だから、なんでもない日でさえ毎日特別な日に変わり、分け合ったおやつとともに思い出が増えていく。
「ねえ要さん、私最高のこと思いついちゃったんだけれど」
「ん? なに?」
朝、ご飯を作ろうとふたりでキッチンに向かう途中、要さんを見上げる。
「たい焼き器でオムレツを焼こう」
最高だ、と言われた。最高でしょう、と神妙に頷いておいた。