小倉ひとつ。
父も同じく『おめでとう、瀧川さんに会えるのを楽しみにしている』と笑ってくれた。


祖父は『お茶が好きだなんて、なんて話が合う素敵なひとなんだ』と喜んでくれ、

祖母は挨拶がてら要さんをお茶席にお招きしようとしたので、さすがに初対面でそんな恐ろしいことはやめてほしいと必死に説得した。


「おばあちゃんは要さんと初対面でしょ!」

『あら、お茶会は初対面で親睦を深めるのに最適なのよ』

「そうだけれどそうじゃなくて、気を使っちゃうでしょう、何時間いてもらう気なの……!」


もう! と電話口で抗議する私に、要さんは大体の事情を察したらしい。


「美味しいお茶菓子と抹茶を持ってお伺いしようか」なんて言ってくれたけれど、そんなに気を張っていたら疲れてしまう。だめです、絶対だめ。


手土産にお茶菓子は手放しで喜ばれるからいいと思うけれど、お茶会はまた今度にしよう。


せめて三回目くらいから。初回からなんて話題も尽きちゃう。


当日、案の定諦めていなかったおばあちゃんに、とっさに「要さんは私がひとりじめするんだからだめです!!!」と抗議して無理矢理引き離し、

おかしな抗議に笑い転げた家族におなかを抱えられながら見送られ、

帰路で要さんに「ひとりじめしてくれるの?」とからかい混じりにつっこまれたものの、なんとか無事に私の家への顔通しは終わった。


お願いだから掘り下げないでほしい。あのときはあれしか思いつかなかったんだもの……。
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