小倉ひとつ。
恋をしている自分に気づかなかったときが、きっと誰しもあると思う。


懐かしさと苦しさと甘さと苦さと、いろいろな感慨が混ざる感覚も、きっと誰しもあると思う。


私は瀧川さんのことが、気づいたら好きだった。


ああ好きだ、と唐突に気づいて、振り返ったら随分前から好きだった。


気づく前も、気づいてからも、毎日があっという間だった。


好きだなあと思っているうちに一年が過ぎて、二年が過ぎて、十年過ぎて。


今はもう、ふたりとも大人になった。


でも私はまだ初恋を終わらせられずに、大事に抱えて潜めている。


相手を嫌って終わる恋は、きっと簡単ではないけれど、嫌いだ、嫌いだ、と一方向の感情で統一されているからまだ終わらせやすい。


自分の中で区切りをつけるのも早い場合が多いだろう。


……相手を好きなまま終わらせなければならない恋は、きっともっと難しい。


私のように対象外だとか諦めなければいけない何かがあって、諦めようと努力してもうまくいかなくて。


好きだ、でも駄目なんだ、って感情の向きが定まらない。


好きだからこそ理由づけも難しくて、終わりを見つけるには時間がかかるのだろうと思う。


子どもだからって言い訳は、私にはもう使えない。


この恋をどうしてやることもできないまま、秘めているしか、ないのだろう。
< 46 / 420 >

この作品をシェア

pagetop