小倉ひとつ。
分かってはいるんだ。
瀧川さんはすごく聡い人で、すごく優しい人で、よく褒めてくれる。
だから、これが瀧川さんの普通だってちゃんと分かっている。
でも。
でもやっぱり、若干崩れた口調と「好き」だなんて破壊力がありすぎる言葉に、なんだかもう頭が追いつかなかった。
「いただいてよかった。素敵ですね」
美しい目が緩やかに弧を描いて、優しい微笑みが浮かぶ。
「今日も一日頑張れます。ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうございます……!」
今日もなんだなあと今さらなことを思う私の字を、瀧川さんは節の高い指先でゆっくりなぞった。
やっぱり瀧川さんにとって、稲やさんは特別なんだろう。
今日はじゃなくて今日もにしてくれたのは、細やかな気遣いかもしれないけれど、きっとそれ以上に事実だ。
稲やさんのたい焼きがあるから頑張れる部分が少なからずあるんだろう。毎日通うほど。
……それなら、なおさら。なおさら私は。
袋の中心に揃えて書いた「お疲れさまです」の上を、瀧川さんの親指が往復する。
「開けてもよろしいですか」
「もちろんです」
袋の端を押さえて綺麗に破いた瀧川さんの几帳面さに、ああそういうところも好きだなあ、と何度目か分からないことを思った。
瀧川さんはすごく聡い人で、すごく優しい人で、よく褒めてくれる。
だから、これが瀧川さんの普通だってちゃんと分かっている。
でも。
でもやっぱり、若干崩れた口調と「好き」だなんて破壊力がありすぎる言葉に、なんだかもう頭が追いつかなかった。
「いただいてよかった。素敵ですね」
美しい目が緩やかに弧を描いて、優しい微笑みが浮かぶ。
「今日も一日頑張れます。ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうございます……!」
今日もなんだなあと今さらなことを思う私の字を、瀧川さんは節の高い指先でゆっくりなぞった。
やっぱり瀧川さんにとって、稲やさんは特別なんだろう。
今日はじゃなくて今日もにしてくれたのは、細やかな気遣いかもしれないけれど、きっとそれ以上に事実だ。
稲やさんのたい焼きがあるから頑張れる部分が少なからずあるんだろう。毎日通うほど。
……それなら、なおさら。なおさら私は。
袋の中心に揃えて書いた「お疲れさまです」の上を、瀧川さんの親指が往復する。
「開けてもよろしいですか」
「もちろんです」
袋の端を押さえて綺麗に破いた瀧川さんの几帳面さに、ああそういうところも好きだなあ、と何度目か分からないことを思った。