小倉ひとつ。
馬鹿な堂々巡りだった。


同じことを何度も語ってしまうのは、私の恋があまりに明確で無謀で、そのくせ私の引き出しが少ないからでもあるんだけれど。


でも多分、一番は、自分の中の大切な思いを今度こそ語りきれるかな、今度こそうまく形にして引き出しにしまえるかなって何度も思うからだった。


結局今のところは、どうにも形にならないまま、手からすり抜けてしまっている。


この恋は叶わない。十年以上叶っていない。


私はこの、どうしようもなく諦めなければいけない恋をいつもうまく言い表せなくて、何度も言い換えてみる。


……瀧川さんが好き。


好きだけれど、ふいに、好きだって気持ちをしまってしまいたくなる。


大事に抱えてしまい込んで、できれば忘れて、風化した頃に取り出して、懐かしく思えるようになりたくなるときが、まれにある。


この恋をやめてしまいたいんじゃない。

この恋に疲れたんじゃない。


この大事で長い、苦しい恋を、諦めてしまいたいのでは決してなくて。


瀧川さんをちゃんと好きなまま、この恋を宝石みたいに閉じ込めて抱きしめて、あたたかに抱えていたくなるときがある。


今度こそ。いつか。


何回も見つめ直してみたら、ちゃんと気持ちが形になるんじゃないかって思うときが、ある。
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