小倉ひとつ。
「東京でしたら美味しいお店がたくさんありますね、素敵ですね……! 出張って、ゆっくりする時間はあるものなんですか?」

「今回は夕方くらいからゆっくりできる予定です」


おひとりだから人付き合いもなくて、気が楽とのこと。


そうだよね、たとえ仲良しでも、数人で行くとお互い気を使うよね。

同僚ならなおさらそうだろうし、ひとりの方が気兼ねしない。


新幹線を使えばそんなに時間がかからないうえ、かなり本数もあるので、翌日に響かない範囲内でも結構夜遅くまでのんびり楽しめるんだとか。


「それはよかったです。是非美味しいものをたくさんお召し上がりください」

「そうですね、美味しいものをたくさんいただいてきたいと思います」


目をキラキラさせた私に瀧川さんがくすくす笑うので、是非是非、と笑い返す。


こういうとき、食べてきたいじゃなくて、いただいてきたいって言うのが瀧川さんらしかった。


「東京はよく行かれるんですか?」

「さすがに二桁まではいきませんが、出張だけでも年に何回かは行きますね。ただ、日持ちとか包装とかを考えると、お土産がいつも同じになってしまって。何かおすすめのものをご存知ありませんか?」


自分がよく知らないものを差し上げるのも不安だもんね。

お土産だもの、せっかくならご当地らしさがほしい。東京っぽいものってなると大変だよね。


私、何かご存知だったかなあと記憶を探る。


……うーん駄目だ、毎回適当にその場その場で見繕ってるから、あんまりご存知じゃないかもしれない。
< 83 / 420 >

この作品をシェア

pagetop