小倉ひとつ。
瀧川さんにお会いできないんだと思うと、ちくりと刺すような小さな痛みが、胸に潜む。


視線が泳いで、ほとんど分からないほどほんの少しだけ、下を向いた。


瀧川さんの目を見たら、押さえつけたいろいろがあふれそうだった。


意識して口角を上げたけれど、もう、うまく笑えているのか自信がない。


思わず黙り込んだ私に、瀧川さんがそっとこちらを伺う気配がした。


「立花さん?」

「……いえ、なんでも。すみません、なんでもありません」


訝しげな表情に、ちゃんと何かしらの話題を振ろうとして、でも真っ白な頭では何も思い浮かばなくて、余計に口が滑る。


大丈夫です、とは反射的に言えなかった。

ちょっとぼうっとしちゃって、なんて言い訳もとっさにうまく思いつけなかった。


せめて笑おうと思って失敗する。渇いた喉とひりつく胸が痛かった。


明らかな強がりに瀧川さんはただ穏やかに頷いて、ええ、と相槌を打った。


肯定でも否定でも、ましてや疑問でもない返答には、瀧川さんのこまやかさがにじんでいる。


返事をしてくれるタイミングが好きだと思った。

瀧川さんの穏やかな「ええ」が好きだと思った。

何も聞かない優しさが好きだと思った。


瀧川さんが好きだ。

好きだ。


そして、好きだと思ったら——考える間もなく、するりと、思わずこぼしていた。


「……寂しくなるなって。寂しいなって、思って」
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