笑え、オリオン座
それから過ぎた時間は、とても長く感じた。
部屋が静寂で包まれていたのもあるし、周りの人たちとは初対面だということもあったかもしれない。
派手な男が出ていってから、何時間かたっただろうか、なんだか外が騒がしいようだ。
男の人が言い争っているようだった。
その声はだんだんとこの部屋へと近づいてくる。
そして、
「おいお前ら、移動すんぞ、ついてこい!」
扉が開くなり、派手な男が怒鳴る。
後ろから何人か男の人が入ってきて、私たちの足を縛っているロープを切る。
目隠しをつけられたあと、無理矢理立たされ、部屋を出された。
しばらく歩くと、足音の響き方が変わる。
最初にいた、あの廃墟のようだった。
またしばらく歩き、目隠しを外される。
やはり、あの廃墟のようだ。
ただ、証明はない。
窓もないから部屋の中は真っ暗だった。
バタン、派手な男たちが出ていき扉が閉まる。
木の軋む音はもちろん聞こえず、さっきまでいた部屋の扉のような感じでもなかった。
それからまた静寂が訪れる。
その静寂を破ったのは、さっきの部屋で扉に体当たりをしていた中年男性だった。
「俺らはどうなるんだ。俺には妻も子供もいるのに…。」
泣きそうな声だった。
「おい、どうすんだよ」
「誰かどうにかしろよ」
「助けて…。」
中年男性が不安を漏らしたからか、他の人たちの口からも不安が言葉になり、溢れる。
一気に騒がしくなったこの部屋で、自分自身も確かに言い様のない不安を感じていた。
叫びたいようなわけじゃないし、泣きたいわけでもない、でもなにかしないときっとこの不安は拭えないような変な感じ…。
ーーーーガンッ!ガンガンッ!
遠くで何か、音が聞こえた。
それは他の人たちも同じなのか、騒がしかったこの部屋に一瞬で静寂が落ちる。
この部屋にいる人たちの視線は扉の方へと集まる。
静寂が落ちた部屋にまたも扉を蹴るような音が響いた。
けれどやはり、遠い。
ーーーーガンガンッ!ガツッ!
また音が響くが、最後の音は今までの音と違っていた。
扉を蹴る音だけじゃない…、まるで壊されたような…。
期待で不安が消え、頬が緩むのが分かる。
すると、足音が聞こえてきた。
足音は速い、きっと走っている。
それも一人じゃない、複数人…。
けれど足音はこちらに近づくにつれ、少なくなる。
それとは対照的に怒鳴り声が大きくなる。
この部屋からじゃない、もっと遠く、遠くの方から男の人が怒鳴っている。
一人じゃない、何人も…。
やっぱり、助けが来たのかも。
顔に自然と笑みが浮かぶ。
足音がすぐ近くまで来て、止まる。
外から扉を開けようとするが、鍵がかかっていて開かない。
ーーーーガンガンッ!
扉が蹴られる音がした。
みんなの視線に期待が込められ音のした方を見る、瞬間、音がやむ。
誰かが生唾を飲んだ音が聞こえた気がした。
そして、
ーーーーガツッ!
外から扉に斧のようなものが降り下ろされ、内側から微かだが刃先が見えた。
ーーーーガツッ!ガツッ!
一定のリズムで扉に斧のようなものが降り下ろされる。
扉がボロボロになってきて、外にいる人は斧のようなものを使うのをやめ、扉を蹴る。
一回蹴っただけで扉はほとんど壊される。
外にいる人の顔が見えた。
警察かと思ったが、その人たちはスーツを着ていた。
サングラスをつけていて、身長も高い、なんだか安堵すると同時に、原因の分からない恐怖心が芽生えた。
もう一度扉を蹴り、扉が完全に壊れる。
そして、スーツの男たちが部屋へと入ってきた。