笑え、オリオン座
駅から自分の家の最寄りの駅に着き、バスに乗り込む。
空いていた席に座り、窓の外を見つめた。
電車に乗っているときと比べ、視線が低くなってイルミネーションも全体的には見ることができない。
そういえば、電車からイルミネーションを見た日、何かあったような…。
ここまでくるともう駄目だ。
彼のことを思い出してしまう。
あの日、彼とドア越しに目があって以来彼を見たことはない。
あの吸い込まれるような漆黒の瞳をもう一度見てみたい、そう思うけれど、それは叶うかどうか分からない。
男子の制服が学ランの学校を調べてみたけれど、近くにそれらしき学校はなかった。
もしかしたら、修学旅行途中だったかもしれない。
彼の周りを見なかったから断言出来ないけれど、そうかもしれない。
もしかしたら、遠くから彼女に会いに来た可能性もある。
そこまで考えると無限ループで、なんだか泣きそうになった。
周りの人に気づかれたくなくて、必死に堪えていると、バタッという音がした。