恋する人、溺愛の予感


付き合ってもない、職場が同じってだけでこれって何か可笑しくない?

贔屓にして頂いているのは感謝しかないけれど。

そもそも、私が贔屓にされる理由なんかなかったと思うんだけどなあ。

余計な馴れ合いなんていらないと普段から思っている私。

そんなんだから、態度にも出てるわけで。

だいたいの人には煙たがられる。

まあたまにこんな私を好き好んでくれる不思議な人も出てくるけれど。

でも、ここまでの人は初めて会うから正直言ってどう接して良いのかわからないのも事実。

だから突き放すような言動になるのかも。



「海ちゃん、今何考えてるの?」

「へ?」

先生の顔が目の前にきてるのに気が付かなかった。

私、よくもこんな、男性と2人きりの密室空間で気を飛ばせたものだ。

「先生、前を向いてください、危ないです。」

というか、余計なこと聞いてくれなくて結構です。

軽く睨みながら言ったはずなのに、先生はニカッと爽やかスマイルを見せて居直った。

だいたい、私がみんなに疎まれるようになったのは、この先生がイケメンすぎて爽やかオーラを振りまくくせに、私を贔屓にすることも一理あると思う。

ほんと、イケメンすぎるのどうかと思うよ。

さっき、爽やかに微笑まれたとき、キュンときたことはこの際、内緒にしておこう。

内緒にしておけば、誰にも迷惑かからないし、傷つかない。

私にだって、この前やっと気付いた好きって気持ちを抱く権利くらいあるはずだから。



木谷 海。

27歳。

目立ちすぎず、地味すぎず、一応、それなりに身なりには気をつけている方。

それはなぜかって、面倒ごとを避けたかったんだけれど…。

まんまと先生に恋してしまいました。

ほんと、なんでこんな先生に…。

恋心っていったい何なの?

それは自分でもよく分かりません。

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