恋する人、溺愛の予感
それから完全に日が暮れるまで彼に連れまわされた。
きっと、予定になかったところも行ったはず。
27歳にもなって付き合ってない男の人と遊びで映画館へいくなんて思ってもいなかったけれど、今流行りの洋画で、見たいと思っていたやつだったから結構楽しめた。
高速道路をおりて、ネオンの光る高級ショップが並ぶ道を黒塗りの外国車に揺られる事数十分。
街を抜け、その光達が眼下に見えた頃。
「さあ、ついたよ。」
そう言ってエンジンを切り車を降りた彼は颯爽と私が座る助手席を開けてエスコートしてくれる。
今日はいつも以上に丁寧に扱われてる気がするんだよな。
なんて思うけれど、彼が優しくて紳士的なのはいつもだから大して気にするような事ではない。
でもやっぱり、今日は何だかいつもと違う気がするんだよね。
まあいいか。
そう思いながら、手を引かれた先にあったのは、こじんまりとしたレストラン。
うわーお、見るからに高級そう。
彼らの隣で歩かなきゃならないし、結果的に先生と2人っきりになっちゃったし、黒塗りの外国車に乗らなきゃならないしで、気合入れて1番高いワンピース着てきて正解だったあ!
だってここ、絶対正装しなきゃならないでしょ。
あー、私、テーブルマナー大丈夫かな。
そんなに育ちはいい方じゃないんだけどな。
「緊張しなくていいんだよ。
個室だし、今日は僕を見ながら食べるといい。」
「へ?」
「だから、次までに僕をお手本にして食べ方覚えてくれればいいから。」
「ああ、はい、ありがとうございます。」
一瞬意味を取り間違えた事が恥ずかしい。
それと、彼の気遣いが妙に照れくさい。
そして、次があるのかと期待してしまった自分、なんてお粗末なんだろう。