PromiseRing
立ち上がってもふらつきはない。

そっと部屋を出ると、キッチンらしき場所に多賀谷社長の後ろ姿。

「多賀谷、社長……?」

「あ、ああ、起きたのか。
具合はどうだ?」

背中に隠すなにか。
キッチンの様子からして、なんとなーく嫌な予感がしないでもないが、スルーしておこう。

「もう大丈夫、です。
その、……ご迷惑をおかけしました」

「いや、いいんだ。
……ほんとに大丈夫か?」

多賀谷社長の大きな手が、私の前髪をかき上げる。
そのまま押さえたかと思ったら、こつんと額をつけてきた。

「んー、熱は下がってるかな」

どうしたらいいのかわからなくて固まってた。
不意に視線があって、多賀谷社長がにっこりと笑う。

< 10 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop