PromiseRing
ちらりとだけ私を見て社長と話し始めた多賀谷社長に、静かにあたまを下げて部屋を出る。
うちの社長は多賀谷社長のことをことのほか気に入っており、年が近いこともあって弟のように可愛がっている。

 
……はぁーっ。

自分の部署がある、フロアのお手洗いに入ってため息。

……あれ、は一体?

さっきの、うなじにふれた唇の感触を思い出し、頬に熱が上がっていく。
鏡に映る自分の顔は真っ赤。

……きっと、からかわれただけなんだ。

銀縁眼鏡にきっちりと結い上げた髪。。
服だってシンプルといえば聞こえはいいが、要するに地味。
感情が表に出にくいのと、銀縁眼鏡が相まって、“氷の女”とか陰で呼ばれてる。

……こんな私を。
多賀谷社長が気にするわけなくて。
……きっとからかって、その反応見て楽しんでただけ。

そうわかっているのに、早い心臓の鼓動に納得できない。
< 3 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop