PromiseRing
……はぁーっ。

大きく何度か深呼吸して、気持ちを落ち着ける。

それでも。
キスマークなどついてないことがわかっていながら、なんとなく恥ずかしくて。
髪をほどいてうなじを隠し、席に戻った。

 
それからしばらくして。
またやってきた多賀谷社長の姿に、アップにしてた髪を慌ててほどいてしまう。

……別にこのあいだのこと、意識してるわけじゃないし。
それに、前回はたまたま私が頼まれただけで。

「浅井くん。
多賀谷社長を社長室まで案内、頼む」

多賀谷社長と目が合うと、ニヤリと笑われた。
黙って席を立ち、黙って案内する。
エレベーターの中は運悪く、またふたりっきり。

「……なあ。
それってガードしてるつもり?」

またパーソナルスペースを無視して立つ、多賀谷社長の吐息が耳にかかる。
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