【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
『といろ、』
──もはや、狂気の沙汰。
莉胡の感情だけを掻い摘んで、囚われさせて、縛るくせに、決して囲いはしない。──自分に依存させるようなそのやり方は、狂気でしかない。
知らない間に莉胡は、それにはまっていくだけ。
「すみません、ちょっと俺用事あるんで。
……なんかあったら連絡ください。"信頼してますから"」
『……ほんと千瀬は面白くないね』
そんなぼやきが聞こえたけど、躊躇なく電話を終わらせる。
春たちに莉胡が熱中症で倒れて東の人間に介抱されたことだけは伝えておく。元東の人間だと知られた今、中途半端に隠す必要もなくなった。
……それにしても。
咄嗟に電話をかけたのが十色さんなんだから、莉胡らしいというか、あまり人のことを気にしてないというか。
「とにかく、俺の協力できることなら一応やるよ。
……莉胡が西側につくって言ったから、俺もそれを裏切るつもりはないし」
「ああ、それだと助かる。
……先に聞きたいのは、東のトップが俺らに喧嘩を売ろうとしてる理由に、心当たりはあるか?」
その理由は俺でもわからないし。
ミヤケに聞けば、多少は教えてくれるかもしれないけど。どうせロクなことじゃないのはわかってる。
「……わざわざ莉胡の存在をちらつかせてるんだから、もう1回莉胡のことを取り戻すのが目的っていうのが大きいと思うけど。
あの人はほんとに何考えてるかわかんないから、信じられないほど大きな計画か、あっけないほどどうでもいいことのどっちかだよ」
たぶん、誰でもわかるような当たり前の理由で、西に喧嘩を売ったりする人じゃない。
付き合っていた莉胡でさえわからないって言うんだから、俺がわかるわけない。
「……まあ、真っ向から喧嘩売るっていうのも俺としてはアリだと思うけど」
あの人が本気になるのは。
自分が"面白い"と感じたときだけだから。