【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
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「ふふ、豪華なお出迎えだね。
莉胡は困惑してるようだけど」
すらりと滑らかにスライドする車のドア。
その後部座席から出てきた東の王様は楽しげに笑って、手を差し伸べる。それをとった莉胡が続けざまに降りてくると、助手席から降りるのはミヤケ。
「……乃詠さんか千音がくると思ってたのに」
「はっ、俺に会えてうれしーだろ?」
「ど突くぞお前」
何気なく思い出した数時間前の自分の思考。
理不尽だとわかりながらオレンジ頭の脛を蹴って、痛みに悶えるそいつを放って、莉胡へと視線を向ける。
顔色が多少良くはないけど。
十色さんが面倒を見ていたんだから、もうすでに平気、というのはわかる。……が。
「俺が言いたいことなんだと思う?」
「『ひとりで街に出かけて倒れるなら行くな』ってあきれてる」
「大正解。さすが幼なじみだね」
嫌味をしれっと告げて、その頭に手を乗せる。たしかにあきれてはいるけど、心配の方が大きいってことは言わないでおく。
そのまま「で、」と莉胡の腕を引いて、十色さんから引き離した。
「わざわざついてくるなんて律儀ですね、十色さん」
「ミヤケの顔は見飽きてもさ、俺には会いたいかなーと思って」
「十色さんまで俺を邪険に……!
十色さんも千瀬も俺になんの恨みがあるんだよ……!」