【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「莉胡」
「……なに? 織春」
「いまから外泊許可取れそうか?」
何を言い出すのかと思ったら。
唐突にそう言う春に思わずぱちぱちとまばたきを繰り返した莉胡は、「千瀬の家に泊まるんだったら、すぐ出るけど、」と言葉を濁す。
「……いや、ならいい。
明日の放課後、話がある。簡単に済ませるつもりはねえから、時間とるけどいいか?」
「うん……だいじょうぶ」
うなずいた莉胡が、春にほほ笑みかける。
それを見て、莉胡に一言だけ声をかけた春は、「俺らも帰るぞ」と幹部に撤収指示。
「ちゃんと水分取れよ」
「……はぁい」
莉胡の気の抜けた返事に春は苦笑したけど、それ以上深く口出しすることもなく、幹部と帰っていった。
取り残されたこの場で、莉胡が「ごめんね」と俺を見る。
「心配かけてごめんなさい」
「……今回は十色さんが駆けつけてくれたからよかったけど。
誰も動けないことだってあるんだから、無茶しないでくれる?」
「……ごめんなさい」
本気で申し訳ないと思っているようで、しゅんとしている莉胡。
それを見たら責める気にもなれなくて、「家入るよ」とその手を引いた。