【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-



「え、千瀬……?」



すたすたと足を進めた先は、俺の家。

すぐに向かう先に気づいて、莉胡があわてた声を上げるけど、このまま家に帰らせるつもりもない。



「どうせ家帰ったって安静にしないでしょ」



「す、るわよ。十色に怒られたし、」



「だったらなおさら俺の監視下にいて」



「監視って……」



がちゃりと扉を開けて、「莉胡と部屋にいるから」とリビングに声をかけ、部屋へ上がる。

動揺してあわててたくせに、俺の手を振り払うつもりはないらしい。……だから余計に、むかつく。




「あのさ、」



莉胡を部屋に引き入れドアを閉めると、それを背にした莉胡を追い詰め、顔の隣に手をつく。

近くなった距離に莉胡がまばたきを繰り返し、おそるおそる俺の名前を呼んだ。



「春と向き合うんでしょ?

……なら、さっさと十色さんのことは忘れて。いつまでふらふら揺らいでるつもり?」



「……、なんで、千瀬がそんなこと言うの」



「幼なじみが優柔不断だからあきれてるだけだよ」



いまだに莉胡は、あの人の手を離せてない。

いつまで囚われてるの、と俺の言葉は間違いなくお節介。……そんなことはわかってるけど。



「ひとりに決められないなら、

ほんとに好きな男ができるまで誰とも付き合うなよ」



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