【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
……ほら。
こういうところが胡散臭い。
思ってもないでしょ?と問えばくすくすと笑う十色。
やっぱり、と呆れながらも、どこか安堵している自分がいる。──この人がまだ、手を伸ばしてわたしを求めようとしているその事実に。
『莉胡って本当に千瀬のこと好きだよね』
揶揄うわけでも、冷やかすわけでもなく。
ただ無機質に思いふけるように当たり前のことを口にする十色に、「いまさらね」と返す。わたしが千瀬のことを大好きなことなんて、みんな知ってる。
『そうじゃなくてさ。
……いま様子見てる限り、俺と付き合ってた時と一緒だよ。ほかに付き合ってる男がいても、莉胡は千瀬千瀬って千瀬のことばっかりでしょ』
「それは、」
『世間一般的に見れば、恋人の方が幼なじみより優先順位高いと思うよ?』
──そんなこと、言われなくてもわかってる。
わたしがなによりも、誰よりも千瀬を優先するのは間違ってるって。だから本来なら、わたしは千瀬よりも織春を優先するべきだって、そんなことはわかってる。
「どうしてわたしが千瀬のことを優先するのか……
理由を言ったら、きっとみんな笑うわよ」
『笑わないよ。なんで笑うの』
「……自分でもふざけた理由だって自覚してるから」
そこに存在するのは、明確な理由ではなくふざけた理由ひとつだけ。
──だけど、わたしはずっと、それを守っていたかった。
「……幼い頃に、約束したの。
ずっとわたしの一番は千瀬で、千瀬の一番はわたしだって」
きっかけは何だっただろうか。
どうしてそんな話をしたのかはもう覚えていないのに、その約束だけはずっと、わたしの頭の中に残ってる。