【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
千瀬とわたしが交わした、最初で最後の約束だから。
"約束"なんていう、実りのない答えを、千瀬は選んだりしない。
幼かったあのときだから。
幼なじみのわたしだったから交わせた、呪いのような約束。
「ふざけてるでしょ……?
そんな理由で、わたしは千瀬を優先してるのよ」
そう言えば、電話越しに聞こえてくるくすくすという笑い声。
やっぱり笑ったじゃないの。笑わないって言ったくせに。
『ごめん、怒んないでって。
べつにくだらないって思って笑ったわけじゃないんだから』
「……じゃあなんで笑ったの」
『莉胡はやっぱり莉胡だなって思って』
もちろん、わたしはわたしだ。
誰になんて言われようと、わたしはわたしでしかない。
『そういう莉胡だから、俺は莉胡を好きになったんだろうなって今でも思うよ』
「……そう」
『元彼に口説かれてるって、わかってる?』
「……口説く気のない人に口説かれたりしないわ」
本気でわたしのことを口説く気なんて、微塵もないくせによく言う。
求めてはくれるけどそれ以上は、はじめから渡す気もないんでしょう。
「やっぱりあなたに相談したのは間違いだった」