【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-



そう言い放って、電話を続けながらスマホに届いているメッセージを確認する。

十色から電話がかかってくる前に美容室で髪を染めてきたのだけれど、約束通りに写真を送った織春からは『似合ってるな』と返事が来ていた。



『ひどいなあ。

真面目に相談に乗ってるでしょ?』



「どこが真面目なんだか。

……いまから買い物行くから、切ってもいい?」



『ん?……誰と行くの?』



「由真ちゃん。……千瀬の彼女。

幹部と一緒に海行くとき、由真ちゃんも一緒だから」



一緒に買い物行くのよ、と。

薄く息を吐いて、「えー?」なんて言っている十色に「切るわよ」ともう一度告げる。しぶといから黙って切ったところでめげるような人じゃないけど。



『まったく。

……相性いいのに、なんでそんなに鈍感なんだか』




そろそろ家を出なければ、由真ちゃんとの約束に遅れてしまう。

ごちゃごちゃと何か言っている十色に「じゃあね」と冷たく言い放って電話を切ると、バッグをつかんで家を出た。お父さんはまた長期出張で、今度は九州らしい。



千瀬パパは今日家にいるんだっけ、と。

なぜか知っている幼なじみのお父さんの予定を思い出して、隣の家のチャイムを鳴らせば。



「はい。……って、莉胡か」



「……千瀬」



わたしがチャイムを鳴らすのがめずらしいせいで別の来客だと思ったのか、千瀬が出てくる。

顔を合わせた幼なじみは一瞬気まずそうに視線をそらしてから、「どうしたの」と尋ねてきた。



「千瀬パパに、お願いしてたことがあって。

……またちょっとしたら家に帰ってくる回数少なくなるって聞いてたし、今日はお休みでしょ?」



「書斎にいるけど、呼んでこればいいの?」



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