【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「うん、お願いしてもいい?」
頼めば、ふたつ返事で奥へ引っ込む千瀬。
すこしして出てきた千瀬パパは、にっこりと微笑んでわたしに茶封筒を差し出した。
「はいこれ、頼まれてたの」
「ありがとう。
仕事忙しいのに頼み事しちゃってごめんね」
「莉胡の頼みならいつでも引き受けるよ。
うちでゆっくりしていったらいい、って言いたいとこだけど……どこか出かける?」
「うん。友だちとお買い物してくる」
受け取った茶封筒をバッグに入れて、「また来るね」と千瀬パパに手を振る。
後ろにいた千瀬は、いつものように「暗くなるのが遅いからって遅くまで外にいないこと」と小言を言って、わたしを見送った。
……うん、だいじょうぶ、だ。
まだ気まずさは残ってるけど、ちゃんと千瀬と話せる。──幼なじみで、いられる。
「莉胡ちゃんごめんねっ、待った……?」
すこし早くつく計算で家を出たから、寄り道したけれど時間には間に合った。
それから数分もしないうちに駆け寄ってきた由真ちゃんは、ふわふわとした雰囲気を纏っていて、とてもかわいい。
女の子らしいって、たぶんこういうことだ。
もともと関わりはほとんどなかったから、正直由真ちゃんと話したことは、あまりない。
だけど海に一緒に行くことが決まったとき、織春が「女同士の方が話しやすいこともあるだろ」と、由真ちゃんとの仲介役をしてくれたのだ。
どうやら織春曰く、由真ちゃんはおなじ中学出身なんだとか。
そこでようやくすこしずつ話すようになって、今日のことも決めた。
過去に女子と多数揉めたことのあるわたしが、こんな風に女の子と仲良くできるのはひさしぶりで。
「ううん、わたしもさっき来たところなの」