【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-



「うん、お願いしてもいい?」



頼めば、ふたつ返事で奥へ引っ込む千瀬。

すこしして出てきた千瀬パパは、にっこりと微笑んでわたしに茶封筒を差し出した。



「はいこれ、頼まれてたの」



「ありがとう。

仕事忙しいのに頼み事しちゃってごめんね」



「莉胡の頼みならいつでも引き受けるよ。

うちでゆっくりしていったらいい、って言いたいとこだけど……どこか出かける?」



「うん。友だちとお買い物してくる」



受け取った茶封筒をバッグに入れて、「また来るね」と千瀬パパに手を振る。

後ろにいた千瀬は、いつものように「暗くなるのが遅いからって遅くまで外にいないこと」と小言を言って、わたしを見送った。




……うん、だいじょうぶ、だ。

まだ気まずさは残ってるけど、ちゃんと千瀬と話せる。──幼なじみで、いられる。



「莉胡ちゃんごめんねっ、待った……?」



すこし早くつく計算で家を出たから、寄り道したけれど時間には間に合った。

それから数分もしないうちに駆け寄ってきた由真ちゃんは、ふわふわとした雰囲気を纏っていて、とてもかわいい。



女の子らしいって、たぶんこういうことだ。

もともと関わりはほとんどなかったから、正直由真ちゃんと話したことは、あまりない。



だけど海に一緒に行くことが決まったとき、織春が「女同士の方が話しやすいこともあるだろ」と、由真ちゃんとの仲介役をしてくれたのだ。

どうやら織春曰く、由真ちゃんはおなじ中学出身なんだとか。



そこでようやくすこしずつ話すようになって、今日のことも決めた。

過去に女子と多数揉めたことのあるわたしが、こんな風に女の子と仲良くできるのはひさしぶりで。



「ううん、わたしもさっき来たところなの」



< 126 / 232 >

この作品をシェア

pagetop