【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
こつんと頭を小突いてきた春に言い返そうとしたけど、担任が来て時間切れ。
累のメンバーが多数通ってるからといって、どこか大きい違いがあるわけじゃない。至って普通に1日がはじまって、1日が終わる。
女子から距離を置かれているからわたしは累の幹部や千瀬と話しているのがほとんどで、昼休みを共にするのもそのメンバー。
──4月の入学で出会って、2ヶ月半。
「莉胡ちゃんのお弁当いつも美味しそうだよねー。
莉胡ちゃんママがつくってるって言ってたけど、莉胡ちゃんは料理しないの?」
こてん、と首をかしげて聞いてくるのは、柳ヶ瀬 千咲(やながせ ちさき)。
もちろん累の幹部のひとりで、髪が特徴的な蛍光色のオレンジだ。ふわふわ揺れてるのを見て、ぬいぐるみのライオンみたいだなと思うのはわたしだけじゃないはず。
「わたし?出来なくはないけど……
簡単なものしか作れないわよ?ね、千瀬?なんなら、千瀬のほうが料理上手よね?」
「……上手かは知らないけど、俺の方がよく料理するってだけでしょ」
……よく言う。
わたしのお母さんと千瀬のお母さんはすごく仲良しで、よく休日もわたしたちを放って遊びに行ってしまうのだ。
そうすればふたりで過ごしているから、どちらかがご飯を作ることになるんだけど。
わたしは簡単なものしか作れないし、手の凝ったものは千瀬が作ってくれる。彼の得意料理はビーフストロガノフなんだから、人は見た目によらない。
「……意外な特技じゃねえの。
つうか、しれっと流したけど休日も一緒にいんだな〜」
「莉胡も俺も恋人いないから一緒にいるだけ。
莉胡のお父さんが映画好きでDVD集めてるから、そのコレクションから勝手に借りて一緒に観るぐらいだよ。……たまに出掛けるけどね」
うんうん、と。
それに同調するようにうなずいて、ふとすこし前に千瀬にお願いしていたことを思い出す。
「そうだ、千瀬。
このあいだ言ってたスイーツ食べ放題、連れて行ってくれる?ねえ、考えとくって前に言ってたやつ、」
「……それは嫌だ。
好きなスイーツ買ってあげるから家で食べなよ」
「えー……
予約したら食べられる限定のスイーツが食べたいの、」