【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
11.晴雲秋月
【Side Chise】
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──人生の中で、こんなにも莉胡と会わなかった夏休みははじめてだ。
両家が騒ぐためだけに合同でする晩飯も、夏休み前にやったのと、そのあと両家の父親の予定が合わなかったので夏休みには行われず。
隣の家に住んでいるのに、莉胡に声をかけることもなく。
メッセージのやり取りもしなくなって、どちらかといえば由真に使った時間の方が長かった。
そして由真に会ったら会ったで、聞かされるのは春の話。
……まあ、由真が好きなのは春だから、そうやって色々俺に相談したくなるその気持ちももちろんわかるんだけど。
その春がいま付き合ってる相手って誰?
……うんそうだよね、莉胡なんだよね。
「憂鬱すぎる……」
どうして幼なじみが付き合ってる男の話を聞かされなきゃいけないのか。
聞きたくもないし、何なら夏休み最終日の東西戦のこともあって、春とは夏休みに結構会ってるのに。
莉胡に会ってもどうせ織春が、なんて言われるし。
俺をとりまく世界のすべてが春に持って行かれているような気がして、なんとなく釈然としない。
「お前、なんでせっかく海行くっつってんのにそんなくらい顔してんだよ!」
「……トモは逆になんでそんなに元気なの」
肩に腕を回してくる暑苦しいトモにため息をひとつ。
なんだろうな。性格というか雰囲気がミヤケにめちゃくちゃ似てる。おかげで俺も塩対応だ。
「そらさ〜、ナンパし放題だからに決まってんだろ〜?
ああでもお前彼女いるから関係ないのか」
「アルトのそのカップルに対する対応の温度差もなんなの」
そんな綺麗な顔して遊びまくってんだから、彼女のひとりぐらい容易くできるでしょ。
いろんな女の子引っ掛けるなら、自分に合う女の子をひとり見つける方が圧倒的に早そうだけど。
俺と出会った時からすでにこのスタイルを貫いてるアルトだけど。
……一体この男、いつから女の子と遊んでるんだか。