【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
ごめんって言えば、莉胡はきっと許してくれる。
そう思ったら、いままで俺はなにを躊躇っていたんだろうとあきれてしまった。
「──莉胡」
目的地に到着してすぐ。
とりあえず隣に置いていた小さめのスポーツバッグだけを手に、後ろに停まった車から降りてきた莉胡に声をかける。
「っ……、千瀬……」
どうか、した?
そう不安げに俺を見上げる瞳は、俺の言葉でまた傷つけられることを果てしなく恐れてるいるようで。逃げたいと願望のこもったその瞳に、また俺の胸のうちは狭くなる。
「……ごめん」
わずかに、見張られる瞳。
太陽の光が瞳に差し込んで、輝く瞳が宝石のように見えてしまうのも、俺が盲目なせいか。
「ひどいこと言ってごめん」
「……っ、」
「もっとはやく謝ればよかったのに。
……俺のせいで傷つけてごめん、莉胡」
莉胡が俺の親父に用事があると言ったあの日には染められていた、莉胡の髪。
触れるのはいつぶりだっけと思い出しながらその髪をそっと撫でると、宝石の瞳に浮かぶ透明な涙。それだけで、莉胡が俺の言葉にどれだけ傷ついて、耐えてたのか、痛いほどに実感させられた。
「……泣かないで。
莉胡のこと、俺は抱きしめてあげられないから」
「ッ……もう、ぜったい、
仲直りしてくれないと、思ってた」
こんなに亀裂が長引いたのは、はじめてだ。
日に日に薄くなっていく幼なじみという関係に、莉胡はずっと不安だった。──俺が莉胡を、見捨てるわけないのに。