【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
そんなわけないのに、未来永劫触れられない関係になるのかと不安を抱えていた莉胡。
はらはらととめどなく涙をこぼす莉胡の頬にそっと触れて、涙を拭う。それすら意味を成さないほどに涙を止めない莉胡が、距離を詰めた。
「……莉胡」
抱きしめてあげられないって、言ったのに。
ぴったり俺に寄り添って胸に顔をうずめてくる幼なじみを、放っておけない。
一瞬視線を由真に向ければ、由真は小さく笑ってうなずく。
それが了承だとわかるから、莉胡の背中に腕を回して引き寄せた。
「泣くほど苦しませてごめん、莉胡」
春の方は、わざと見なかった。
あとで色々言われるかもしれないけど、それでも莉胡を突き放すなんてことは俺にはできない。
幼なじみじゃなく。
ひとりの女の子として大事な莉胡よりも優先できるものなんて、俺にはないから。
「ちせ、」
「……ん?」
「これからも……
わたしの幼なじみで、いて、くれる?」
胸元でくぐもった声を出す莉胡。
その問いかけには正直苦笑いを返したいところだけど、莉胡がいま望んでる答えはそれじゃない。──あの日の傷を癒してあげられるのは、傷つけた俺だけだ。
「いいよ。……幼なじみでいる」
「っ……うん、」
ぎゅうっと、莉胡が俺の服を握る。
それから安心したように離れて頬に残る涙の痕を手の甲でぬぐうと、ひさしぶりに見せてくれる満面の笑み。