【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「思った以上に広いね莉胡ちゃん……!」
「そうね。
部屋も家具もおしゃれだし、ペンションって来たことなかったからすごく楽しみにしてたの……!」
……テンション高いな。
奥から聴こえてくるふたりのはしゃいだ声に、なんというか幹部もあきれつつ、かわいいから許している感じがする。
「莉胡ちゃんってー。
こういうのそんなにはしゃぎそうなイメージないんだけど、結構好きなんだねー」
「……莉胡、昔から秘密基地とか好きだったから」
昔俺と莉胡の家族でどこかの別荘みたいなところも行ったけど、そのときも莉胡は大はしゃぎだった気がする。
俺の手を引いてあっちこっち動き回って、その結果夕飯前に疲れて眠ってしまって怒られてた。
奥に進んでようやく女子ふたりの姿を見ると、ふたりとも目が輝いてる。
……ただ単に、女子ってこういうのが好きなのか。
「ねえねえ、わたしと莉胡ちゃんの部屋あの部屋でもいいー?
おっきい窓から海が見えたの……!」
「……もう偵察してきたのか。
まあ、お前らの好きなようにすればいい」
「わーいやった!
じゃあ莉胡ちゃん早速部屋で着替えようよー! こうやっておしゃべりしてる時間もったいない!」
海海!と。
はしゃいだテンションのままのふたりが、部屋に入って扉の向こうに消える。俺らがいるリビングは一気に静かになって、思わず顔を見合わせた。
「……いいの、あれ。
なんなら俺らのこと放置して海行きそうなテンションだけど」
「あいつらふたりで外行かせたら絶対どっかで絡まれるだろ。
……とりあえず部屋割り振って、俺らも準備するか」
そう言って適当に分かれる幹部。
アルトとトモが同じ部屋、千咲と羽泉が同じ部屋、ってことは必然的に俺が春と相部屋になる。