【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
べつにいいんだけど、莉胡への感情を認めてしまった今、心なしか気まずい。
それでも文句は言ってられないと部屋に入れば、バッグを置いた春が俺の名前を呼んだ。
「……なに?」
「……由真とうまくいってるか?」
ちょっとだけ拍子抜けだったのは、てっきり莉胡の話だと思ったからだ。
まさか由真のことを聞かれると思わなくて、「まあ」と小さく返す。うまくいってるのはうまくいってるけど、由真はまだ春のことを好きなわけで。
……そもそも俺ら、つきあってる理由が不純だし。
「……そうか。
あいつからどこまで聞いてるのかは知らねえけど、由真のことは、お前なら大丈夫だと思ってるからな」
由真は春が好きで、春は莉胡が好きで、俺も莉胡が好きで、莉胡は織春と向き合おうとしていて。
誰ともかみ合わないこの関係に、もはや笑うしかない。──いっそのこと十色さんと莉胡が別れた隙を狙って、俺が、莉胡を奪っておけばよかった。
「はいはい。
……莉胡のこと、俺はお前に任せるから」
「……ああ」
「さてと、いつまでものんびりしてたらすぐに着替えろって怒られるよ。
あのふたり、一緒にいるときは俺にも春にも関係なく文句言いそうだし」
「……ふっ。そうだな」
話を一度終了させて、黙々と着替える。
軽く準備して部屋を出たら、なぜか最初に入っていったはずの女子ふたりがまだ出てきてない。……たしかに女子の方が時間かかるだろうけど、もう結構経ってるでしょ。
「莉胡、由真?
……着替えるの、まだかかりそう?」
コンコン、と部屋をノックして。
中に問えば、数秒して部屋を出てくるふたり。