【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-



どうして……東と西は仲良くなれないの。

言葉にはしなかったけど、莉胡が言いたいことはわかる。莉胡にとっては東も西も関係なく、大事な仲間ばかりだ。もちろん東にも、西にも。



「初代に奪い合われた人も、

そんな気分だったんじゃないの?」



「え……?」



「知らない?東西の初代の話。

すきな女の人のことを奪い合って、月霞と累はつくられたんだよ」



「……前に、十色に教えてもらった気がする」



「その女の人も、そんな気分だったんじゃない?

……自分を求める男が東と西に分かれてるなんて、きっとどっちも選べなかったんだと思うよ」



だから結局、どちらがその人を手に入れたのかもわからない。

そもそもその話が本当だったのかすら、調べる術はない。集会を行うにしても、その頃の記述が残ってないせいで、初代の名前すらわからない状態なんだとか。




「……そう、よね。

どっちもなんて、欲張りすぎなのよね」



小さくくすりと笑った莉胡。

そういう意味じゃないんだけど、と訂正しようとして、莉胡が手を差し出したから言葉は呑み込んだ。



「もうちょっと奥進みたいから、手掴んでて」



「……溺れないでよ」



「だからつかんでってお願いしてるんじゃない」



はやく、と無邪気に笑う莉胡の手に手を重ねる。

首が浸かるほど深いところまで行った莉胡は、俺の手をぎゅっと握って、すこしだけ引き返した。



「千瀬、こっち来てみて。

途端にめちゃくちゃ冷たくなるから」



< 145 / 232 >

この作品をシェア

pagetop