【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「ん、ほら。莉胡の好きないちご」
「……ありがと」
差し出されたスプーンに乗るいちごをぱくりと食べて、当たり前のように好みを知っているこの関係に、ひどく心地よさを感じる。
お礼と言って白玉をあげたら、「俺別に白玉好きじゃないよ」と言われた。もちろん知ってるけど。
「千瀬、マンゴーもちょうだい」
「抹茶食べながらフルーツ食べたら味混ざらない?」
そんなことを言いつつも、「あーん」とスプーンを差し出してくれる千瀬。
何度か咀嚼してからお礼を言っていれば、ふと背後から聞こえた声。
「いいなあ、カップル。
彼氏めっちゃイケメンだけど彼女もかわいいし……あんなふうに甘えられたら彼氏も甘やかしちゃうよね」
ん?と。
思わず振り返れば、そう話していた女の子ふたり組が、すこし気まずげに視線をそらした。
……カップルって、もしかして、
わたしと千瀬のこと言ってたりする?
「……っ、完全に勘違いされてる」
「だろうね」
だろうね、って……!
わたしはこんなに動揺してるのに、どうしてそんなに平然としてられるの!?と言いたくなるのはただの八つ当たりであって。
「………」
「……キスでもしとく?」