【完】ファントム・ナイト -白銀ト気高キ王-
「転ばないわよ。
そんなにおっちょこちょいじゃあるまい、……っ、」
あるまいし、と。
言った瞬間に動かした足がどうやら石の上で滑ったようで、バランスを崩す。思わずぎゅっと目をつむったわたしの腕を、幼なじみが強く引いた。
「ったくもう……
転ばないんじゃなかったの?」
腕を引かれた拍子に、千瀬の胸におさまるわたし。
直接肌が触れ合うせいで、くらくらする。
「ほんとに莉胡はあぶなっかしいんだから」
そんなわたしの気持ちなんて知らない千瀬が、ぐちぐちとわたしに文句を言う。
ごめんね、と誤ったら、あきれた顔をされた。
水着だけで密着してるのが恥ずかしくて離れようとしたら、腰に腕を回されて引き寄せられる。
……っ、離れようとしてるのになにしてるの。
「ねえ千瀬、っ」
「ちょっとだまって。
……あそこにいるの、東のメンバーだって」
「え……?」
東のメンバー?と。
顔を上げて千瀬につられるようにそっちへ視線を向けると、ここから見える砂浜で、軽いビーチバレーをして遊んでいる男子が数人。──見覚えのあるそのメンバーは、たしかに、月霞の子たちだ。
「十色さんとか、ミヤケとかは俺と莉胡が西にいるのを知ってるけど……
わざわざそれを下の人間にまで話してるとは思えない」
「………」
「ここで西の人間と話してるのを見られたら、ややこしいことになる」